2012年1月16日月曜日

piece of dew...

私じゃありません。弟のことです。


弟は昔から注意欠陥(例:忘れ物が多い)、多動性(例:じっとしていない)、衝動性(例:すぐカッとなって怒る)という注意欠陥・多動性障害(通称ADHD)の3要素を持っていました。忘れ物は多いわ、朝が起きれないわ、授業抜け出してどっか行ったりするわ、友達とよくケンカしてくるわ、・・・心理学を学んだ今となっては「そういえばそうだった」ということばかりですが、あいつはそういう子どもでした。
私は知らなかったんですが、小学校時代の弟の担任の先生と、当時弟が通っていたアトピーの主治医の2人が「(弟は)多動性障害があるかもしれない」と言っていたそうです。でも、母は「うちの子を障害者扱いしないでください!」と逆切れし、それ以上何も聞かずに帰ってしまったらしい。まぁ、最近になってようやく「発達障害」という言葉が認知されてきましたが、昔は今よりずっとそういうのにデリケートでしたからね。いきなり「○○障害」と言われたらそりゃビックリするかも。

知らない人もいるかと思うから説明します。ADHDは脳の機能障害といわれています。「目の前の多くの情報から必要なものを選び出す」「必要な対象に注意を向ける」という機能を持つ前頭前野(だっけな)のコントロールがうまくいかず、目の前の状況から自分に大事なものを選んだりひとつのものに注意を向けるというのが苦手になりやすいのです。そのコントロールがうまくいかないっていうのは、前頭前野を正常に動かす神経伝達物質、ドーパミンの分泌量が少ないからみたいです。けっして本人の努力不足や親のしつけ不足じゃないんです。

えーと、詳しくは・・・こちらのホームページに書いてられる方がいるのでそちらをご覧ください。ここにひとつずつ書いてたらめちゃくちゃ長くなると思うので(汗)

話を戻します。母のそういう態度のせいもあり、あいつはもう大学生なのに注意欠陥・多動性気質がまったく治っておりません。フラフラ遊び歩いて授業をサボるし、約束や時間は守れないし、整理整頓はできないし、相変わらず朝が弱くて誰かに起こしてもらわないと起きられない。以前は「あいつがこうなったのはお前のせいじゃ!」と父と母、それに祖父母までが加わって家族会議になったもんですが、最近は私が知識をつけて「あれはあいつの努力不足じゃなくて脳の機能障害なんだっつの!」と仲裁に入るので少しマシになりました。

ADHDは脳の機能障害なので完治することはありません。薬物療法で症状を軽減させることぐらいですかね。薬を飲めば問題行動は減るといわれてるんですが、それには問題が2つほどあります。
1つは薬自体の問題。薬といってもいろいろあるんですが、その中には健常者が絶対に服用してはいけないとされる依存性の高い薬、国によって使用が禁止されている薬、もろもろがあります。有効なのはわかるけど、そんなもん人に飲ませて大丈夫なのかなぁ。
もう1つは薬の飲み忘れが多いことです。薬っていうのは継続して飲まないと意味ありません。風邪薬のようにちょっと飲んであとは自分の自己治癒力に任せましょう、というのができたらいいですけど、さっき言ったようにADHDそのものはいくら待っても治りません。薬を飲み続けて症状を緩和する、ということしかできないのです。だけど、何度も言うようにADHDの人は注意欠陥の症状がよく出ます。わざと飲まないのではなく、飲み続けるということ自体ができない。そんな飲み忘れをいかにして防ぐか、これが一番難関かもしれませんね。


今、我が家ではあいつを病院につれていくかどうかでもめています。
嫌だろうと思いますけどね。だって行く場所は精神科か心療内科。「カウンセリングなんて障害者みたいで嫌だ!」って健常者は一度ぐらい思うんじゃないでしょうか。自覚症状がないのに行くのは嫌だ、と思うのは当然だと思います。いろいろ話を聞かれて先生にそれを書きとめられる・・・って、初めての人はちょっと戸惑うかもしれません。
絶対嫌がると思う・・・(^_^;)

ADHDの人(特に子ども)にはとことん褒めてあげるのがいい、といいます。「どうしてこんなことができないの!」ではなく、「今日はちゃんとできたわね。明日も頑張ろうね」などなど。我が家は父も母も優しさとは無縁の人間で、私や弟の「できない」ことには「できないわけないだろ。甘えんじゃねぇよ」という姿勢を貫いております。お陰で私もよく暴力を振るわれました。弟はそんな私を見ているからか素行はよかった気がするんですが、学校などで頻発するADHDの問題行動を隠せるわけがないですから、父や母は見て見ぬふりをしていたのかもしれません。
でも、そんな見て見ぬふりができない時期がついにやってきました。あいつがそこらへんの人と違っているのはもう明らかです。来年成人だというのに朝が起きれない、約束が守れない、授業を無断で抜け出す、片付けができないなどなど、みんな手を焼いていますが私だけはザマァミロ、と言っています。子どものころに見て見ぬふりをして私ばっかり叱っていた両親が悪いんだよ。

昔は私ばっかり怒られて嫌な思いしたんだから、今はお前がその苦しみの半分でも味わってみればいいんだ。両親に唇を切るほど強く叩かれたり、冬に外に放り出されたり、時計の針を読み間違えてしばかれたり、お前はいっつも見て見ぬふりをされて経験したことないもんな。
お前だって一度ぐらい虐待まがいのことされてみろ!

・・・とまぁ、そうやって突き放してやってもいいんですが、両親や祖父母にとことん怒られてるあいつを私まで追い詰めたら可哀想でしょ。そんなことはしておりません。心の中では思うことはあるけどね。
昔は「何もできない不器用な姉、なんでもできる器用な弟」だったのが、今では「手のかからない姉、手を焼かせる弟」です。肉親のやることってほんと理不尽だよね。私はさんざん肉親から「とろい」だの「失敗作」だの言われて悔しくて頑張ったから今の自分があるんです。だけど、弟は肉親に見て見ぬふりをされた挙句どうしようもないほど泥沼にはまり込んでしまっています。・・・未成年のタバコ、窃盗、傷害、いろいろありましたがここでは割愛します。

あいつがこうなったのはあいつのせいじゃない、と私は思ってます。だから私はあいつに「勉強しろ」とか「家に帰ってきなさい」と言ったことがありません。家に帰ってきたくなかったら帰らなくていい、その代わり自分で生きていけるだけの力をつけろ、と言ってやりました。つまり金を稼げ、と。で、いつまで続くかわからないけど、あいつはバイトを始めて(はした金ではありますが)金を稼ぎ出しました。このまま続けられるといいんだけどな。
現実的じゃないんで両親には一笑されておりますが、あいつにも私に負けないくらい無鉄砲な夢があります。ま、似たようなもんですね。非現実的で実現するかもわからないけど、いつか叶えたい忘れられない夢。そういう意味では私も弟もまだまだ子どもなんだろうな。


最近私とあいつは一緒に『MHP3rd』をやって、ギャーギャー子どもみたいに騒いでおります。あっちの方が腕がいいので、「お前すげーな!」とことあるたびに褒めてやってます。それが姉としてなのか、心理学を勉強する人間としてなのか、それはわかりません。でもまぁ、あいつが嬉しそうな顔するしなんでもいいか・・・って思いますけどね。

昔は憎み合っていた我々姉弟ですが、今はまぁ・・・マシになったというか。私もようやく姉らしさを発揮できるようになったっていうか。「オレのことを一番わかってくれるのは姉ちゃんだ」などと言ってるらしいし。検査にはまだ一度も行ってないし確定じゃないけど、ADHD疑惑の弟のことはちゃんと理解してやらんとな。姉として、心理学を学ぶ人間として、その両方で。


お前が努力してるのは知ってるけど、今のままじゃあかんのやで。

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