爽快な驚き。 - 担当授業のこととか,なんかそういった話題。
代数にはとんと疎いので,「『割り算のできる環』ってことかなぁ。まあ,どうせ実数みたいなもんだろ。」と,文脈からいいかげんに類推して調べもせずに放置していたのだが,数日前にまた division ring という言葉を見かけたので,日本語訳は「商環」かとヤマをはって検索してみた。
もちろん,division ring という用語そのものを検索すれば確実なのだが,それでは面白くない。だから訳語を考えてみたのである。「商環」というのは昔何かで見かけたことがあるような気がして,それほど新奇な感じがしなかったので,当たりかな,と期待していたのだが,大はずれだった。
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Division ring というのは斜体 (skew field) のことだそうな。積が可換でない体のことである。
斜体自体はずいぶん前から知っていたが,まさか「体」を意味する field を用いずに,「環」を意味する ring を名前にあてるとは,ちょっと驚いた。
日本語では可除環という訳語があるそうな。
なお,その論文の雰囲気から察するに,「積が必ずしも可換とは限らない体」という意味合いで division ring と言っているようだったから,実数だと思ってもあながち間違ってはいなかった。
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さて,僕の間違っていた本命「商環」の方はというと,通常は「剰余環」を指すのに用いられる用語らしい。
これは,ある種の同一視を入れて作られる新しい代数のことであって,「割り算ができる環」というイメージとはかなりかけ離れている。
そもそも「商〜」という言葉は数学では一般に,あの集合の元の間になんらかの同一視という構造を付与した数学的対象を指すのに使われるわけだから,なにも同一視をしてそうにない division ring に「商」という文字をあてるあたりが,僕の数学的センスのなさを露呈している。
複素数も,x の実数係数の多項式全体に x2+1 という2次式で割った余りが等しければ同じものとみなすという同一視を入れて得られる剰余環の一つということになるらしい。
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こうした知識は Wikipedia から得たわけだが,そのような複素数の構成方法はだいぶ前から知っていた。
ただ,今回,4元数も同じように剰余環として導入できるという事実を知って「なるほど,そりゃそうだ!」と爽快な驚きを味わった。
x のみの多項式を考えるのではなくて,x,y の2変数の多項式を考えるんだそうな。
最近4元数に興味を持っていろいろ調べていたが,複素数のアナロジーとしてそういう導入方法があり得るということはまったく思いつかなかった。
そういう意味ではまた僕の数学的センスのなさをアピールすることになってしまったようだが,今はそうやって己の不甲斐なさを嘆くのではなくて,一つ賢くなったという嬉しい驚きの心地よい余韻に浸ることとしよう。
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